電圧源と電流源の使い方 ~電圧源と電流源が混在する場合の解析方法ついて解説~ 等価変換、テブナンの定理、重ね合わせの理
はじめに
電気回路や電子回路に出てくる電源には2種類あります。電圧を供給する「電圧源」と電流を供給する「電流源」です。本記事では、それぞれの回路上の取り扱いや電圧源と電流源の等価変換について解説します。
この記事を読むことでわかること
- 電圧源と電流源の取り扱い方
- 電圧源と電流源が混在する回路の解析方法
電圧源と電流源とは?
電圧源
電圧源は以下のように一定の電圧

負荷抵抗が

負荷抵抗が

電流源
電流源は以下のように一定の電流

負荷抵抗が

負荷抵抗が

理想的な電圧源と電流源
唐突ではありますが、理想的な電源というものを考えてみます。電源にとって何が理想的でしょうか。例えば、家庭用コンセントの電圧は100[V]ですので、100[V]の電圧源と考えることができます。また、家電はコンセントの電圧に合わせて100[V]付近の電圧で動くように設計されています。先ほど電圧源は接続する負荷によって、取り出せる電圧が変動すると説明しましたが、家電の負荷(抵抗)はバラバラなので、コンセントにはどんな家電が接続されても100[V]に近い電圧(欲を言えば100[V]一定の電圧)を取り出せる必要があります。よって、電圧源は一定の電圧値を取り出せることが理想になります。一方で電流源は一定の電流値を取り出せることが理想になります。
理想的な電源:
- 電圧源:接続される負荷によらず常に一定の電圧値を取り出せる
- 電流源:接続される負荷によらず常に一定の電流値を取り出せる
それでは、電圧源では一定の電圧値を、電流源では一定の電流値を取り出せるのはどのような場合かを考えてみます。
・電圧源の場合:
電圧源で取り出すことのできる電圧

以上のことから、理想的な電圧源は以下のように内部抵抗がゼロの場合となります。
現実には理想的な電圧源は存在しませんが、内部抵抗をできるだけ小さくして、理想に近づけています。

現実には理想的な電圧源は存在しませんが、内部抵抗をできるだけ小さくして理想に近づけています。
・電流源の場合:
電流源で取り出すことのできる電圧

以上のことから、理想的な電圧源は以下のように内部抵抗が無限大の場合となります。

電圧源と電流源の等価変換
電圧源と電流源は互いに等価変換することができます。電圧源と電流源が混在するような回路では等価変換が有効な場合もあります。下図の回路において、電圧源と電流源が等価であると言える条件は負荷抵抗

それぞれの回路において、
電圧源の回路:
電流源の回路:
これより、(1)式と(3)式、(2)式と(4)式が等しくなる条件は
よって、電圧源を等価な電流源として表す場合は

同様に電流源を等価な電圧源として表す場合は

コラム:理想的な電圧源と電流源の場合は等価変換できない!
理想的な電圧源、電流源での等価変換を考えてみましょう。
前述のとおり、等価変換は
同様に理想的な電流源の内部抵抗は
等価変換の式
除去時の取り扱い
回路解析において、電源を除去するケースが度々訪れます。例えば、テブナンの定理で回路の内部抵抗を求める場合や重ね合わせの理で複数電源のある回路を単独の電源で表す場合などです。電圧源、電流源それぞれについて除去時の取り扱いについて解説します。
電圧源の場合
電圧源の等価回路において、電圧源を除去する方法は2通り考えることができます。「短絡除去」と「開放除去」です。短絡除去は電源を取り除いてからその箇所を短絡することをいいます。一方で開放除去は電源を取り除いた後、短絡は行わず開放したままにすることをいいます。


電源を除去したので、この等価回路に残るのは内部抵抗のみとなります。そこで除去後のそれぞれの抵抗に着目します。電圧源の内部抵抗は
よって、電圧源を除去する場合は短絡除去とする必要があります。
電圧源は短絡除去!

電流源の場合
同様に電流源についても考えていきます。電流源の等価回路において、短絡除去、開放除去した回路はそれぞれ以下のようになります。


電源を除去したので、この等価回路に残るのは内部抵抗のみとなります。電流源の内部抵抗は
よって、電流源を除去する場合は開放除去とする必要があります。
電流源は開放除去!

以上のように電源除去時の取り扱いは電圧源と電流源で異なるので注意しましょう。
例題:電圧源と電流源が混在する回路に流れる電流
以下の電圧源と電流源が混在する回路の抵抗に流れる電流を3通りの方法で求めてみます。
- 電圧源と電流源の等価変換により求める方法
- テブナンの定理を使って求める方法
- 重ね合わせの理を使って求める方法

電圧源と電流源の等価変換により求める方法
1つ目は電圧源と電流源の等価変換を使って求める方法です。端子a-bの電源側の回路に対して、等価変換を繰り返すことでシンプルにしていき、最終的には1つの電源と抵抗で表します。
はじめに端子a-bに接続される抵抗以外の回路を回路構成を変えずに左側に寄せます。この赤枠囲った箇所に対して電圧源と電流源の等価変換を適用します。オレンジ色の部分が電圧源、青色の部分が電流源になります。

続いて電圧源と電流源の等価変換により、赤枠内の電源や抵抗でまとめられる箇所(合成できる箇所)がないか探していきます。今回はオレンジ色の電圧源を電流源に等価変換する場合と青色の電流源を電圧源に等価変換する場合が考えられます。
オレンジ色の電圧源を等価変換した場合は以下のようになりますが、中央の1[Ω]の抵抗が邪魔になって、電源や抵抗をまとめられる余地がありません。

一方で青色の電流源を電圧源に等価変換した場合は、変換後の電圧源の内部抵抗1[Ω]と中央の1[Ω]の抵抗が直列接続になり、2[Ω]の抵抗に合成することができます。

最後に2つの電圧源を1つに合成することを考えます。並列に接続された2つ以上の電圧源は電流源に等価変換することで合成が可能です。等価変換後は下図のように電流源と内部抵抗の並列接続となるので、電流源同士、内部抵抗同士で合成できます。電流源の並列接続はそれぞれの電流値を総和して1つの電流源として表せますので、



以上より端子a-b間の2[Ω]の抵抗に流れる電流
テブナンの定理を使って求める方法
続いてはテブナンの定理を使って求める方法です。電流

はじめに電圧

接点pに対してキルヒホッフの第一法則を適用すると、
接点pを始点及び終点とする閉ループに対してキルヒホッフの第二法則を適用すると、

(1)式を変形した(1)’式を(2)式に代入することで未知の電流
以上より、端子a-b間の電圧
続いて、端子a-b間の合成抵抗



テブナンの定理の等価回路より、求める電流

関連記事:
テブナンの定理の証明、使い方については以下の記事にて詳しく解説しています。
重ね合わせの理を使って求める方法
最後に重ね合わせの理を使って求める方法を説明します。重ね合わせの理では、回路上の電源がそれぞれ単独にあるものとして解析した結果を合成(重ね合わせ)することで電流を求める手法ですが、電源を消去する際に電圧源は短絡除去、電流源は開放除去します。
まずは電圧源のみの回路にて負荷に流れる電流
右側の電圧源でのみ構成される回路は電流源を開放除去して以下のようになります。

この回路は以下のように変形することができます。

回路全体に流れる電流
以上より、負荷電流
続いて、電流源のみの回路にて負荷に流れる電流
左側の電圧源でのみ構成される回路は電圧源を短絡除去して以下のようになり、

この回路は以下のように変形することができます。

電流
負荷電流
最後に重ね合わせの理により、負荷電流
関連記事:
重ね合わせの理の使い方と証明については以下の記事にて詳しく解説しています。
ここまで3つの方法で負荷電流
まとめ
電圧源の特徴:
- 電圧源は一定の電圧を供給する電源と内部抵抗との直列接続で構成される
- 内部抵抗により分圧するため、接続される負荷よって取り出せる電圧が変化する
- 理想的な電圧源は内部抵抗がゼロで負荷によらず一定の電圧を供給できる
電流源の特徴:
- 電流源は一定の電流を供給する電源と内部抵抗との並列接続で構成される
- 内部抵抗により分流するため、接続される負荷よって取り出せる電流が変化する
- 理想的な電流源は内部抵抗が無限大で負荷によらず一定の電流を供給できる
電圧源と電流源は等価変換が可能
電圧源が供給する電圧を
但し、理想的な電圧源と電流源には内部抵抗が存在しないので、等価変換はできません。
電圧源と電流源の取り扱い方
電圧源と電流源が混在する回路は、電圧源と電流源の等価変換、テブナンの定理、重ね合わせの理などの方法により解析が可能です。回路解析の過程で電圧源、電流源を除去する際は電圧源は短絡除去、電流源は開放除去します。
参考文献
- 電気回路(1) 直流・交流回路編 コロナ社 早川義晴/松下祐輔/茂木仁博 1986年
- 詳解 電気回路演習(上) 共立出版 大下眞二郎 1979年